かごめかごめ かごのなかのとりは いついつでやる よあけのばんに つるとかめがすべった うしろのしょうめん だあれ 英佑 :(走っている。切れ切れの息、足音) 英佑 :なんだよ、なんなんだよお前らは!急に出てきやがって… (数多の女の声。高笑い、すすり泣き、「報復を、復讐を」という声) 英佑 :俺お前らに何もしてねぇよおおおおお!!! (女の声。「嘘だ、お前が殺した、お前たちが私を殺した」と言っているが、ほとんど聞き取れない。) 英佑 :は!?…やべぇ、行き止まり (笑い声が大きくなる) 女  :やっとみつけた。 (突如として煌びやかな衣装を纏った女性が現れた。長い黒髪、切れ長の澄んだ瞳。右眼を覆う眼帯。) 女  :あんたたちの業は、あたしが晴らす。 (無数の女の声、吸い込まれる様に消える) 英佑 :あんたは…? 女  :鈴芽、と申します。お怪我はありませんか? 英佑 :あ、あぁ。 女  :よかった。 英佑 :さ、さっきのはなんだったんだ、なんでおれを狙ってたんだ、鈴芽さんはどっから来たんだ、なんだその格好は、あと… 女  :先ほどのものは「業」と言います。悪霊の一種だと思っていただければ良いです。かつて未練や屈辱を持って死んだもの、だと言われています。普通業は無差別に人を狙うことはないのですが、このところ彼女達の挙動が激しいのです。私の出どころですが、物理的にここへ来たわけではありません。私自身も少々人知を超えた存在です。業を退治する、業とは違う霊と思っていただければ。この格好は制服のようなものです。珍しいですか? 英佑 :待ってくれ、そんないっぺんに言われても… 女  :はぁ。 英佑 :鈴芽さん、は、俺を助けてくれたんだよな。ありがとう。 女  :いえ、これが私のお仕事ですので。 英佑 :………。 英佑 :さっきのが悪霊で、なんでか俺を狙ってて、鈴芽って人はそれを退治する霊で、それってつまり、つまり…。 女  :どうかされました? 英佑 :夢なら、早く覚めてくれーーーー!!!(走り去る) 女  :…夢じゃ、ありませんよ。 (業たちの声。「逃がさない、許さない、復讐を、報復を」などと不審な発言。) (場転。次の日の朝、登校中) 壮太 :へぇ、そんなことがあったのか。 英佑 :ねぇよ!夢の話だって言ったろ 壮太 :怖い夢は人に話すと良いって言うもんねぇ。英佑君は相当怖かったんだねぇ。 英佑 :怖くねぇ!ただ、あんまりリアルで可笑しな夢だったからよ 壮太 :夢ねぇ。 英佑 :なんだよ。 壮太 :いや。少し気になるだけ。 英佑 :なんで。 壮太 :うーん、勘? 英佑 :ええっ、やめてよお前の勘当たるんだから。 壮太 :そうだねぇ。何も無いといいけど。 英佑 :不振なこと言わないでくれってば 壮太 :あぁ、やっぱ怖いんだ。 英佑 :怖くねぇよ!! (予鈴が鳴り響く) 壮太 :あ、やば。 英佑 :走れ! 女  :籠女籠女、籠の中の鳥はいついつ出やる。夜明けの晩に鶴と亀が滑った。後ろの正面だぁれ。 壮太 :君が英佑の言っていた女性か。 女  :ふふ、あなたたちは今でも仲が良いのですね。 壮太 :今でも…? 女  :昔も、とても仲が良かった。特に、悪さをする時。 壮太 :何、昔僕らが幼稚園の先生のスカートめくって遊んでたのを見てた? 女  :いいえ。そんなことをしていたの。 壮太 :楽しかったよ。 女  :でも、もっとずっと昔のこと。 壮太 :それって一体、 SE  :すぱこーん 先生 :はい居眠り現行犯。 壮太 :ヴ… 先生 :私の授業はそんなにつまらない? 壮太 :いえ…、まったくそんなことは…。 先生 :よろしい。では授業を続けます。 英佑 :おい、どうした。珍しいな居眠りなんて。(小声) 壮太 :うん…?可笑しいな、国語の授業で僕が寝るなんて 英佑 :はいはい。 先生 :はいそこ静かにー(ちょっと嬉しそう) 壮太 :すみません。(なんか笑顔) 英佑  :こいつら。 壮太 :うぐ…(痛み) 英佑 :おい、どうした壮太。 壮太 :急に、頭が… 瑛太 :大丈夫かって、先生! 先生 :どうしたの壮太君。 英佑 :なんか頭いたいって、保健し 先生 :保健室につれていってあげて。 壮太 :すみません… 英佑 :じゃあ、俺つれてきます 先生 :よろしくね。 壮太 :…っ、ぐ…… 英佑 :ほらいくぞ、頑張れ。 壮太 :ごめん、 英佑 :あとで謝られてやるから。 SE  :がらがら(扉の開く音) 先生 :………、みんなも、風邪には気をつけるように。調子が悪くなったらすぐに言うのよ。 (ガヤ。「せんせーおれも頭いたいでーす」とか。) 先生 :授業を続けます。 (微かに業の声。場転。) 英佑 :もうちょいで保健室だからな、頑張れ 壮太 :っ、はぁーーーー。ごめん英佑、別にどこも具合悪くないんだ。 英佑 :はぁ!? 壮太 :静かに。授業中だよ。 英佑 :なんだよ、サボりか? 壮太 :変な感じがしたんだ。 英佑 :お前が美咲先生の授業で寝るはずないもんな。 壮太 :それもそうだし、変な夢を見てた。 英佑 :お前も? 壮太 :眼帯をした、変な格好のお姉さんに会った、気がする。 英佑 :まじかよ。 壮太 :続き見れるかなぁ。 英佑 :え、なに、仮病続行すんの。 壮太 :試しにね。美咲先生の授業に出られないのは残念だけど。英佑は戻らないと不振がられるよ。 英佑 :お前なぁ。…まぁいいや。お前一人で平気だよな。あんまり深入りするなよ。 壮太 :うん。あとでノート取らせてよ。 英佑 :あいよ。終わったら保健室行くから。 壮太 :うん。 (英佑去る。) 壮太 :…く、いでててて(まだ頭が痛いようである) 先生 :あ、おかえり。壮太くんの調子はどうだった? 英佑 :あんまり心配するほどじゃなさそうです。とりあえず寝かしてきました。 先生 :そう。ありがとう。あとで様子見に行ってあげて。 英佑 :はい。 英佑  :自分で行ってやれればいいのにな、美咲先生。 英佑 :おーい壮太ー?起きてるー? 壮太 :(寝息を立てている) 英佑 :起きろ。昼だぞ。 壮太 :(なんだかとっても寝苦しそう) 英佑 :…おい、起きろって、平気か? 女  :大丈夫ですか? 英佑 :どうしたんだろう、 女  :もしかしたら、業からの攻撃にあっているのかもしれませんね 英佑 :なんで壮太まで…助けられねぇのか 女  :私が行ってまいります。 英佑 :……何故お前がここにいる。 女  :業を退治するためです。あなた、業に襲われたことを夢だとでも思っていらっしゃいましたか? 英佑 :夢じゃねぇのか… 女  :いらっしゃいますか? 英佑 :へ? 女  :あなたも、彼を助けに来てくださいますか? 英佑 :行くって、どうやって。 女  :私があなたの意識を連れていきます。彼の意識が今不安定な状態ですので、あなたに声をかけ続けてほしいのです。 英佑 :…おけ。行くなら早くしてくれ。 女  :かしこまりました。 壮太 :君たちはなんなんだ、英佑を襲ったのは君たちなんだろう (お前もだ、とかなんとかの業の声) 壮太 :何故僕らを狙うんだ。何か理由があるんだろう。教えてくれないか。……無理みたいだなあ。どうやったら起きれるだろう。 女  :あんたたち。 英佑 :うぉい!壮太! 壮太 :え? 英佑 :無事か!早く起きろよ。 壮太 :起き方がわかんないんだよねぇ。 女  :あんたたちの業は、あたしが晴らす。 (業の声。「ええ晴らしましょう晴らしましょう。共に業を晴らしましょう。あはははは」) 壮太 :あれ、友達にでもなった? 英佑 :よくわかんねぇけど、気づいたら横にいた。 壮太 :へぇ。ありがとう。助かったよ。 女  :業に意識を乗っ取られて正気を保っていられるなんて普通じゃないんですよ。強い精神力をお持ちで。 壮太 :お褒めいただき光栄だね。 英佑 :で、どうやったら起きれるんだ 女  :大丈夫ですよ。お二人とも、目を閉じてみてください。 英佑 :ん。 壮太 :はい。 女  :深呼吸して。 (英佑いなくなる。眠りから覚める。) 壮太 :君が英佑の言っていた人だよね。さっき、の話の続きは聞かせてもらえないの? 女  :昔は昔。ずぅっと昔です。 壮太 :そう。助けてくれてありがとう。 女  :本当ですよ。ずぅっと昔。私がまだ、生きていた頃。 英佑 :お、やっと起きたか。遅いから心配したぞ 壮太 :ふああ、寝た気がしないどころか生きた心地すらしなかったよ。今何時? 英佑 :12時45分…、起こしに来てから5分も経って無い。 女  :あちらには、時間なんてありませんからね。 壮太 :お姉さん、こんなところにいて平気なの?怪しまれたりしない? 英佑 :本当だよ、そんな派手な格好で。 女  :いえ、私は普通人には見えませんから。 壮太 :そうなの。 英佑 :じゃあ、なんで俺らには見えんの 女  :何故でしょう…。業が関係しているのかもしれませんが、少々、分かり兼ねます。 壮太 :せっかくだから、もっと話を聞きたいな。僕らのそばにいていただけませんか?えっと…すずめさん? 女  :光栄なお申し出でございますわ。仕事がはかどります。 英佑 :(おい、勝手に話を進めるなよ。この人だって霊なんだぞ、信用していいのかよ) 壮太 :(でも悪い霊じゃないみたいじゃない。僕らが狙われてるなら、そばにいてもらった方がいい。) 英佑 :(そうだけどさ…) 壮太 :(怖いの?) 英佑 :(ちげぇよ!) 壮太 :じゃあ、よろしくおねがいします。鈴芽さん。 女  :はい。 英佑 :…、まぁ、しょうがねぇや。 女  :ところで。 英佑 :なんすか。 女  :ご昼食は、よろしいのですか? 英佑 :あーーー!食堂!今日の日替わりからあげなのに!! 壮太 :別にいいじゃない、日替わり定食はなくなってもどうせカレーは売れ残るんだからそれで。 英佑 :俺はお袋のカレーしか食わねぇの!行くぞ壮太! 壮太 :…はぁ。親離れできないんだから。 女  :行きましょう、壮太さん。 壮太 :呼び捨てでいいですよ。 女  :では、壮太。 壮太 :(信用した訳じゃ、無い) SE  :チャイム 英佑 :っくあーーーー。疲れた! 壮太 :半分寝てたくせに。 英佑 :うっせ。そんなことよりマック行かね?腹減った。 壮太 :素直にカレー食べてればお腹空かなかったのに。 女  :英佑のお母様の作るお料理はとても美味しいのですね。 英佑 :うーん、手抜きするけどなぁ。なんかカレーは食べ慣れた味じゃないと受付けねぇの。 壮太 :悪いけど、今日はちょっとパス。鈴芽さんと行ってきなよ。 英佑 :え、…あんた、なんか食うの? 女  :いえ。霊ですので。 英佑 :…行く? 女  :興味あります。 壮太 :ごめんね鈴芽さん。こいつあがり症だからあんまり面白い話してくれないと思うけど。 英佑 :あんだと。 壮太 :仲良くしなよー。また明日。 英佑 :おう。…行くか。 女  :はい。 英佑 :(ものを食べながら)業ってさぁ、未練を残して死んだやつの霊なんだよな。 女  :はい。 英佑 :じゃあさ、例えば、無念を晴らすため、本人たちが恨んでる奴をこらしめてやろうとするんじゃないの? 女  :そうですね。普通は。 英佑 :でもさ、悪いけど俺らにはそんな心当たりないんだわ。 女  :ええ。 英佑 :なんでなのかなぁー、って思ってな。 女  :二つ、考えられます。 英佑 :何? 女  :一つは、業たちが恨んでいる人間を見極めることができなくなってしまっているのかもしれない、ということ。 英佑 :挙動が激しい、とか言ってたよな。その理由は? 女  :分かり兼ねます。 英佑 :そうか…、もう一つは? 女  :あなた方が前世で、彼女たちから恨みを買った、ということです。 英佑 :そんなん知るかよ。 女  :単なる仮説です。前世と今世の魂が全く一緒であることは、そうそうありません。もちろん少しは似ているのですが、見つけ出すことは困難でしょう。 英佑 :前世ねぇ。信じがたいな。 女  :霊が存在し、悪霊が存在することは事実ですよ。 英佑 :俺にも前世があったんだ、って納得させたいのか 女  :仮説を立てるなら。 英佑 :まぁ、いいや。それも有りかもしんねーな。 女  :そういえば、壮太はどこへ? 英佑 :あぁ、多分美咲先生の仕事が終わるの待ってるんだろ。 女  :みさきせんせい。 英佑 :俺のクラスの国語の担当教員。28歳独身。超美人。 女  :壮太は、みさきせんせいのことが好き、ということですか 英佑 :お互いだろ。いいねぇリア充。しかも相手は超美人で、まさかの生徒と先生の関係。やっぱ一度は憧れるね。 女  :ふふ、隅に置けませんね。 英佑 :ああ。行くか。帰るけど、うちくんの? 女  :そうですね、できればおそばで業を待ち構えたいところです。 英佑 :そっか。狭いぞ、俺の部屋。 女  :邪魔にはなりません。 英佑 :だろうな。 女  :ですが、少々街を調べてみようかと思います。業があなたたちを襲う手がかりが掴めれば。 英佑 :ん、わかった。部屋片付けとく。 女  :お構いなく。では、また。 英佑 :あ、最後に。気になってたんだけど。 女  :はい。 英佑 :お前、業を退治してどうすんの。 女  :え? 英佑 :退治し続けて、いずれ報われることがあるわけ? 女  :……報われること、ですか。 英佑 :あぁ。 女  :また今度といたしましょう、長くなりますので。 英佑 :そうなの。わかった。じゃあまたな。 女  :はい。また。 (業の声。もうすぐ、もうすぐ、と。) 先生 :気をつけて帰りなさいね。 壮太 :うん。心配かけてごめん 先生 :本当よ。送って行きたいところなんだけど。 壮太 :人に見られたら大変だからね。 先生 :早く卒業しなさい。 壮太 :卒業したら、 先生 :ん? 壮太 :デートしようね。 先生 :………っ、 壮太 :照れてんの? 先生 :もう!早く帰れ! 壮太 :はーい。 先生 :また明日。 女  :壮太!大変です! 壮太 :わ、どしたの。 女  :英佑が業に襲われて… 壮太 :え、な、なんでここに 女  :今回の業は強大です、私だけでは敵わなくて… 壮太 :今どこに! 女  :英佑の自宅です。 壮太 :行こう! 女  :先に行ってください、私は協力者を募ってきます! 壮太 :協力者?…わかった、すぐ来てね、僕じゃ多分何もできないから 女  :すぐに! 英佑 :どしたの、そんなに急いで。 壮太 :ええ!?だって、鈴芽が、君が業に襲われてるからって 英佑 :んにゃ、普通に飯食ってたけど。 壮太 :どういうことだよ… 英佑 :…まぁ、上がれよ。 壮太 :………、 英佑 :俺もなんか嫌な予感してきた。 壮太 :なんか飲み物もらっていい?走ったから疲れちゃって 英佑 :持ってくから先上がってて。 壮太 :ありがとう。 SE  :ずずーーーー 英佑 :美咲先生の家から出た後すぐに鈴芽が。 壮太 :今思うとちょっとタイミング良すぎるよね、 英佑 :…鈴芽、あいつなに考えてんだろ 壮太 :………すごい怖いこと思いついちゃった 英佑 :どんな。 壮太 :鈴芽が全部の元凶 英佑 :は? 壮太 :僕らのことを助けるとか言って、本当は鈴芽が僕らを襲う為に全部仕組んでた。 英佑 :ま、まさかぁ。 壮太 :今、窓を開けると、そこには鈴芽と美咲さんが。 SE  :窓を開ける音 英佑 :やっぱ、いねぇよ。心配なら見に行くか?美咲先生のとこまで。 壮太 :……その必要はないみたいで。 英佑 :……!! (英佑の背後に女が現れる。すぐそばに、縛られた美咲先生。) 女  :さすが壮太。勘が鋭いですね。騙してごめんなさい。二人が一緒にいないと、意味がないから。 英佑 :お前…!何が目的だ!! 女  :私が、成仏すること。 壮太 :成仏…?何か未練が? 女  :私は、業。未練と怨みを晴らすため、あなた方に報復をさせていただきます。 つづく!! 吉原の遊女、かごめ。 富豪の男に身請けされ、 また、彼の友人にも身体を開き まるで愛玩具 いや、愛玩具そのもの。 重なる行為はかごめの右目を潰し うら若くも、この上なく萎れた身体には子が宿り せめてこの子のために生きようと どのような辱めにも耐え続けた。 しかし、かごめの胎内に宿った子を、母性を宿したかごめ自体をも疎ましく思った男たちは 溜まった塵を隠すようにふたりを土へ隠した。 散々使われ、苦しめられて来た彼女には抵抗の余力もなく 未練と恨み辛みを残して 眠りについた。 かごめかごめ かごのなかのとりは いついつでやる よあけのばんに つるとかめがすべった うしろのしょうめんだぁれ 女  :あなたたちを見つけるまで、とても長い時間がかかった。 壮太 :僕らには関係ないだろう、美咲さんを離せ。 女  :魂は移りゆくのです。成仏さえすれば。 英佑 :魂ねぇ。そんなレベルでしでかした罪なんて、さっぱり思い出せねぇや。 女  :私の母は、前世のあなたたちが殺したんですよ。 英佑 :へぇ。で?俺ら自身になんの罪があるわけ。 女  :あなたたちに用はありませんが、あなたたちの魂には罰を。 英佑 :断る。 壮太 :英佑。 女  :懸命な判断です。壮太。 壮太 :美咲さんは、関係ないだろう。 女  :みさきせんせいがいれば、あなたたちは拒まないと思って。 壮太 :鈴芽。 女  :私にはもう、時間がないの。 英佑 :時間? 女  :あなたたちを見つけ出すまでに時間がかかりすぎた。 英佑 :どういうことだよ。 女  :もう、私の魂が保たない。未練を残して成仏できない。成仏できなければ輪廻の輪へ戻ることはできない。 英佑 :成仏だの輪廻だのわけわかんねぇんだけど 壮太 :成仏できずに魂が力尽きたら、もう二度とこの世に生まれてくることはできない、ってことでしょう。 英佑 :……。 壮太 :鈴芽は僕たちがどうなればその未練が晴れる。 英佑 :お、おいっ! 壮太 :教えて。 女  :…ただ殺すなんて簡単過ぎますから… 壮太 :今すぐは殺さないと。 女  :あっ、母と同じ目に遭ってもらいます 英佑 :は?辱めを受けてお腹の中の子供と死ねってか。無理だろ俺ら男だし 女  :…ど、どうしましょう。 二人 :どうしたの。 女  :私の未練がどうやったら晴れるのか、わかりません。 二人 :………。 英佑 :とりあえず、一旦美咲先生を離してみようか。 SE  :どすん 壮太 :うわっととと、ほ…。怪我、ないみたいだね。 (ここらへんから業の声F.I) 英佑 :送ってこいよ。 壮太 :で、でも。 英佑 :こんな状況で目を覚まされたら困るだろ 壮太 :…鈴芽…? 女  :わからない…、わからない、わからない。お母さん。お母さん…!(後半から業エフェクト) 英佑 :行けって。 壮太 :…すぐ戻ってくる。 英佑 :鈴芽。 女  :(息が荒い。苦しそう) 英佑 :鈴芽。お前、母さんとは話せたのか?死んでしまった後でも。 女  :……気付いたら一人で。 英佑 :うん。 女  :自分の名前と、お母さんの、記憶だけで 英佑 :うん。 女  :私は、お母さんの恨みを晴らすために、残ったのかなって、思って、 英佑 :ゆっくりでいいから、落ち着いて話せな 女  :(ここから業エフェクト無し)…これまで、私と同じような霊にたくさんあってきて、未練を果たせず消えて行く姿を見て。私も同じように、消えてしまうのかな。生まれることすらできなかったのに、……母親に会うこともできなかったのに。 英佑 :あのさぁ。 女  :…。 英佑 :お前の母さんがどんなだか知らねえけど、自分の恨みを自分の子供に晴らしてもらおうなんて、考えるかなぁ。 女  :考えたかもしれない。 英佑 :いやそうかもしんねぇけど。でもお前自身の未練って母親の恨みを晴らすことじゃないじゃん。 女  :え? 英佑 :お前のやり残したことって、生まれることだろ。 女  :…生まれる、こと。 英佑 :母親の記憶が残っちまったのは知らん。でも、そこに思いとか考えとかってなかったんだろ 女  :……。 英佑 :お前は、お前の未練を果たせばいいだけじゃないのかな。 女  :じゃあ、私は、ずっとずーーーっと勘違いしてたってこと。 英佑 :しゃーねぇよ。意識を持った瞬間から母親の辛い記憶が残ってたんだから。 女  :……。 英佑 :お前の為に生きようとしたんだろ。お前を生きさせるために頑張ったんだろ。 女  :でも、叶わなかった。 英佑 :お前を生まれさせてやることができなくて、心残りだった。 女  :…! 英佑 :今のお前が成仏して、次のお前として生まれてやることが、お前の母親の未練を晴らすことになんねぇかな。 女  :……そう、でしょうか 英佑 :俺だったら、そう。 女  :ふふっ、母性。 英佑 :悪いかよ。 業の声。鈴芽を呼んでいる。 英佑 :な、なんだ 女  :……誰。 「鈴芽、ごめんなさい」 女  :なぜ謝るの。 「私の業を背負わせてしまった」 女  :…お母さん? 「鈴芽。産んであげられなくてごめんなさい」 女  :……お母さん。 「私の元へ来てくれて、ありがとう」 女  :いいえ。ありがとう。 英佑 :鈴芽の母さん。あなたは本当に消えたのか? 「ずっと、そばにいました。こんな姿になってしまったけど」 英佑 :成仏、できるのか。 「私の未練が果たされたから」 女  :未練? 「あなたに会うことができなかったのが、あなたと話すことができなかったのが、一番心残りだったの。次こそ、鈴芽には生まれて欲しいということも。」 英佑 :鈴芽。 女  :……。 英佑 :行きな。 女  :英佑。 英佑 :そんで、生まれてこい。 女  :……。 英佑 :かごめさん。 「はい」 英佑 :ごめんな。 「…彼らの魂が転生してあなたたちになったのなら、きっと彼らの罪も救われるでしょう」 英佑 :ありがとう。壮太にも伝えておく。 女  :美咲先生とよろしく。と。 英佑 :あいよ。 女  :…ありがとう、とも。 英佑 :うん。 女  :もし生まれる場所を選べるなら、あなたの元へ行きたいです 英佑 :だから男だってば。 女  :相手、見つけてくださいね。 英佑 :………おい。 鈴芽とかごめ:ありがとう。 英佑 :…おう。 SE  :どたどたどたどた(FI) 壮太 :英佑生きてる?!…あれ、鈴芽は 英佑 :逝ったよ。 壮太 :成仏、したってこと? 英佑 :おう。母親と一緒にな。 壮太 :…そう。 英佑 :ありがとう、だと。 壮太 :…。 英佑 :それと。 壮太 :それと? 英佑 :美咲先生とよろしく。 壮太 :なっ、…よ、よろしくって 英佑 :俺さ。 壮太 :どしたの。 英佑 :…恋人、欲しいなぁ。 壮太 :どういうこと。 英佑 :自分のしでかしたことが、誰かに一生未練を残してしまうことの無いようにしたい。     相手のためはもちろん     いつかの、輪廻の先の自分のためにも。 エピローグさん。 (鐘の音。静かな歓声。拍手。) 壮太 :やぁ、花婿さん。 英佑 :お、久しぶりじゃねぇか! 壮太 :タキシード、似合わないねぇ。 英佑 :うっせ。 先生 :本当におめでとう。…花嫁さんは?むりさせてない? 英佑 :ありがとうございます。あいつは今、昔の友達と喋ってるみたいですよ。ほら。実はあのドレスの下、ちゃあんと腹巻きさせてあるんです。冷やさない様に。 壮太 :美人さんだなぁ。 先生 :どうしたの壮太くん。 壮太 :ま、まぁ美咲さんの方が綺麗だけどね! 英佑 :あはは。しっかしお前もすげぇよなぁ。高校卒業してすぐにプロポーズ。やっぱやることがちげぇよ。 壮太 :お互いの親からOK出すのに、すごく時間がかかったけどね。英佑こそ、できちゃった婚なんて隅におけないね。 英佑 :あんま褒められたことじゃねぇけどさ。 壮太 :いいんじゃない、英佑らしくて。 英佑 :どういうことだよ。 先生 :名前は?もう決めたの? 英佑 :あ、はい。恥ずかしい話、子供ができる前からずっと考えてた名前で。 壮太 :女の子なんだっけ。教えてよ。 英佑 :…、リン。鈴、って書いて、りん。 鈴芽 :もし選べるなら、あなたの元へ行きたいです。英佑。 おしまい。