君死にたもうことなかれ 〜I Who Walk〜 リルー 性別 男 長い間、裏切られ続けたため人を信用できなくなっている。とてもネガティブでひ弱。クズ。ヘタレ。雑魚。チキン。ゴミ。 リリア 性別 女 ポジティブでいつもリルーを支えている。包容力のある女子。 リトール 性別 男 どんな苦難にも諦めない強い意志を持っている力強い男。でもマイペース。    リルー もう……もうダメだ…………。もう……疲れた……。 リルー(ナレ) 気がついたら僕はここにいた。どこまで行っても廃墟…。どこへ向かえばいいのかすらわからない。そんな場所。でも進まなければいけなかった……。どうしてなのかわからない。でも……俺は進まなければいけなかった。 リルー でも……もう……いやだ……もういやだ……。 リリア あの……大丈夫ですか……? リルー ひっ! リリア あ、そんなに怯えないでください。私は味方です。 リルー み、味方……? リリア えぇ私は味方です。だから怖がらなくていいですよ。 リルー 君は……信じていい人間……なのか……? リリア 信じていい人間……? リルー もう……ここにいる人間は……みんな信用できない……。蹴落とされ……押しのけられ……自分のことしか考えていない……。 リリア ……そうですね……。私もたくさんの人に……。 リルー ……だからもういい……どうせどこに行けばいいのかすらわからない……。 リリア それじゃあ私と行きましょう。 リルー だから、僕はあなたを信用できない! リリア そうですね。でも、それは自分で決めなさい。私は言いましたよ。あなたの味方だって。だからそれ以上はあなたが自分で決めなさい。 リルー …………。 リリア 私はリリア。あなたは? リルー ……リルー……。 リリア そう。リルーというのね。それじゃあ行こう。 リルー …………どこへ? リリア わからないけど進もう。今は進むことしかできないのだから。 リルー …………どこまで行けば……。 リリア まったく……。それしか言えないの? ほら! 前見て歩く! リルー うわっ! お、押さないでっ! リリア ほらっ! どんどん進むわよっ! リルー(ナレ) リリアは……とても強引だった。もう進みたくないと言っても聞いてくれず、僕を引っ張る。そして、やたらと笑顔で話しかけてくる。疲れている上にゴールの見えない道のり……正直めんどくさいやつだった。ただ……この人……何だか懐かしい感じがした……。 リルー ねぇリリア……? リリア んん? どうしたのリルー? リルー リリアは……ここにくる前の記憶はある? リリア ないかな? リルーは? リルー 僕もない……。どうやってここに来たのか……どうしてここにいるのか……ぜんぜんわからない。でも……どこかへ……行かないといけないことだけは漠然とわかるんだ。 リリア そだね。……よいしょっと。ほら、リルー。手出して。足場、崩れやすいから気をつけて。 リルー うん……。あ。 リリア リルー! リルー うわああああ! リトール よっと。大丈夫か? リルー ……わああ……あれ? リリア リトール! どこ行っていたのよ! リトール いや、探してたんだよ。 リリア それはこっちの台詞! リトール まぁ会えたんだからいいじゃないか。 リリア 相変わらずマイペースだなぁ……。 リルー あ、あの……もう大丈夫だから……おろして……。 リトール あぁ、すまん。 リリア あ! リルー大丈夫!? リルー だ、大丈夫……。あの……この人は……? リリア この人はリトール。ボケーっとした東洋人だけど、信用できる人だから大丈夫。 リトール あぁ。俺はリトール。よろしくな。 リルー ……僕は……リルー……です……。 リトール 警戒するな。疑心暗鬼になってもかまわん。だけどそれを相手に諭させるな。そんなことじゃ、いつか一人になるぞ。 リルー ……でも……。 リリア リトール! あんた何しょっぱなからリルーをイジメてるのよ! リトール 別に俺はイジメているわけではない。 リリア リルー。気にしなくていいからね。この朴念仁、デリカシーのかけらもないだけだから。 リルー ……僕は別に……。 リリア リトールはリルーに謝る! リトール ……別にイジメているわけではなかったんだ。リルーすまなかった。 リルー ええっと……だから僕は別に……。 リトール 謝っている人には、大丈夫だと一言、言えばいい。そんな煮え切らない返事をするんじゃない。逆に相手を不快にさせるぞ。 リリア リトール! あんたはねえ……。 リトール だから俺は別にイジメているわけじゃない。 リリア あぁもう……。リルー。気にしなくていいからね。 リルー うん……。 リトール それよりもさっさと進もう。 リリア あんたが話をこじれさせているのわかっているの……? リルー(ナレ) リトール。なぜかことあるごとに僕に説教をする。嫌いなタイプだ。しかし、リトールは、危ない場所だったり、足場が崩れそうなところでは、僕を助けてくれたりした。そして説教を始めた。いい奴なのかよくわからない奴だ。その後、僕たちは永遠に続く廃墟を歩き続けた。 リルー ……もう……歩けない……。 リトール 歩け。進まないとダメだ。 リルー ……なんで……? リリア リトール! そんな言い方しなくてもいいじゃない! それに……そろそろ一回休みましょう。 リトール 仕方がない。 リルー ……はぁ……。 リトール すぐに座り込むんじゃない。崩れやすい場所じゃないか確認し、周辺に危険がないか確認してから野営をするんだ。 リルー は、はい……。 リリア だーかーらー。そうやってすぐに説教じみたことを言わないの。リルーは休んでていいから。 リトール ……はぁ。リリア、お前は甘やかしすぎだ。 リリア リトールは厳しすぎ。 リトール まぁいい。とりあえず俺は周辺を見てくる。お前たちは野営の準備をしていてくれ。 リリア えぇ。 リルー わかった……。 リリア まったく……。 リルー リトールは……何であんなに僕に突っかかるんだろう…。 リリア ……で、でもねリトールはぶっきらぼうで朴念仁で嫌なやつだけど……根はやさしいから。 リルー そう……? リリア それよりもリルー大丈夫? リルー ……ちょっと……というかすごく……疲れた……。 リリア いいわ。今はゆっくり休んでて。 リルー ……うん……。 リリア ……トール。どう……んなにリルーに絡むの……。 リトール そうじゃない。リルーは弱い。このままじゃ、この先、生きていけない。 リリア そうかもしれないけど……。でもね……。 リトール それに俺は昔からそういうところがダメだと思っていたんだ。 リリア ……それでも……。 リトール 俺は俺。リアはリアだ。やり方はそれぞれだな。 リリア そう……ね……。 リルー(ナレ) まどろみの中、リリアとリトールが何かを話していた。それは主にリトールの僕に対する愚痴だった。……僕はやはりリトールに嫌われている……。 リルー うぅ……ん。 リトール 起きたか。 リルー ……あ、うん……。リリア……は? リトール 交代で寝ることにしたからな。今そこで寝ている。 リルー そう……。 リトール ……どうした? リルー(ナレ) ……半分寝ていたとはいえ、リトールが僕をダメだと言っていたことを聞いてしまったせいで、かなり居住まいがわるかった……。 リトール お前は……。 リルー え? リトール リルーは何のために歩いている? リルー 僕は……わからない……。 リトール ……そうか。そういえばここにいる記憶も何もないんだったな。 リルー う、うん……。り、リトールは……? リトール 俺も記憶はない。ただ歩いて、歩き続けることしかできなかった。……行く先々で思った。俺は一体どこへ向かっているんだって。でも俺は歩くことしかできない。 リルー 歩き続ける……だけ……。 リトール でもな、歩く意味を見つけたんだ。 リルー 歩く意味を見つけた……? リトール リリアと出会って、お前と出会った。 リルー 僕たち……? リトール そうだ。だから俺は……答えにたどり着くまで……いつまでも歩き続けてやるさ。 リルー ええっと……どういう……? リトール 何でも聞けば答えが出ると思うな。少しは考えるんだ。 リルー ……。 リトール 勘違いしないでもらいたいのだが、俺はお前をイジメているわけではないんだ。 リルー ……そう……なの? リトール 俺はただお前のことが…………いや、やめておこう。 リルー ……なに……? リトール とりあえず今は寝ていろ。もう少ししたら出発する。 リルー う、うん……。 リルー(ナレ) それから僕たちは、歩き続けた。永遠に続く廃墟。どこまで行けばいいのだろうか……。でも、リリアとリトールは諦めなかった。リトールは歩けと僕を叱咤し、リリアはそんな僕を支えてくれた。うっとおしい奴。嫌な奴。僕は二人にそう思っていた。しかし、今は二人が力強く、そして心強かった。 リトール リルー。あそこにロープを引っ掛けるんだ。出来るな? リルー 大丈夫……。やあ! ……よし! うまく引っかかった! リトール よし。よく出来たな。 リルー こ、子供扱いしないでよ! リトールもリリアも僕より少し年上ぐらいでしょう! リトール さあな。記憶がないからわからないが、リルーが一番頼りないのはたしかだ。 リルー ……それは自覚している……よ……。 リリア だからリトール! なんであなたはリルーをイジメるのよ! リトール だから俺はリルーをイジメているうわけじゃない。 リルー でも……リトールの言うことはたしかだよ……。僕はリリアみたいにこんな状況でも諦めない強い心もないし、リトールみたいに苦境を乗り越える強い力もない……。 リリア リルー……。 リトール リルー。今お前ができないのは当然だ。だからって足を止めるな。お前が俺ぐらいの歳になったときに今の俺と同じことができるようになればいい。だから今は覚えろ、そして経験するんだ。 リルー ……うん。 リリア リルー。リトールの言うとおり。今できなくてもいずれできるようになればいいわ。だから今は私たちに任せなさい。 リルー(ナレ) 二人は真逆だと思った。リリアは僕を基本的に助けるが、リトールは僕自身全てやらせようとしていた。こんな廃墟だらけの場所で情けない僕に色々教えようとするリトールの意図は何となく分かる。しかし、リリアが僕をここまで甘やかす理由がよくわからなかった。 それから僕たちは永遠と道なき廃墟を進み続けた。常に薄暗いせいで時間の感覚がなくなっている。一体どれぐらい歩いているのだろうか。もう何もかもわからなくなっていた。 リリア …………トール。…………するの……? リトール どうするって? リリア このまま進んでも……。 リトール わからない。でも進むしかないんだ。 リリア でも……どうすれば……。 リトール ……たぶんだが……いや、それよりもこいつを……。 リリア ……やっぱりそうなのかな……。 リトール 俺も確信があるわけじゃない。ただ……これは神様がくれたチャンスなのかもしれない。 リリア ……そう……かもしれない……。 リトール リア。腹をくくれ。 リリア …………うん……。 リルー(ナレ) それからも僕たちは進んだ。とにかく進み続けた。しかし変化があった。廃墟は険しくなる一方でリリアが僕を助けてくれなくなってきたのだ。 リルー リリア……僕……疲れたよ……。 リリア 大丈夫よ。がんばって男の子でしょ。 リルー え……? リリア……? リリア ……ごめんなさい……。私も疲れてきちゃって……。もうあたなを後ろから押してあげる力もないの……。 リルー ……そんな……。 リトール リルー。大丈夫だ。ここまでお前は何とかついて来られたじゃないか。自分を信じて進むんだ。 リルー でも……。 リリア ……わかったわ。それじゃあ手だけつないでてあげるね。 リルー ありがとう……。 リトール ん……。行き止まり……か。 リリア でも……ここ以外に道なんて……。 リルー そんな……。あ……。ねえ、あれ……。 リトール あれは……扉か……? 随分高い場所にあるな……。 リリア 上るしかないかな……。 リトール そうだな。上れないような壁でもないしな。 リルー そ、そんな……無理だよ……。 リトール 何もウォールクライミングをしろといっているわけじゃない。崩れやすいが決して上れない壁じゃない。 リルー でも……。 リリア リルー。でもばっかり言っていちゃダメだよ。やってみなきゃ。 リルー そ、そんな……。 リトール ……いくぞ。 リリア ……そうね。 リルー 無理だよ……。 リトール リルー! 置いていくぞ! リルー ……待ってよ……。 リリア がんばって! リルーならできるから! リルー ……うん……。 リトール そうだ。次につかむ場所を崩れないか一度確認してから進むんだ。 リルー うん……。 リトール 気をつけろ。常に2つ以上先を見て動くんだ。進む先があるかどうかを確認しろ。 リルー うん……。 リルー(ナレ) 僕は上った。どれぐらい時間がかかっただろうか。リリアたちが扉の前まで到達してから軽く2時間はかかっただろうか。僕はやっとのことで扉に到達した。 リルー はぁ……はぁ……。 リリア リルー! よくできたわね! リトール あぁ、よく一人でできた。 リルー ……はぁ……はぁ……へへ……。 リトール その達成感。よく覚えておくんだ。 リルー うん……。疲れた……。 リリア 本当に良くがんばったね、リルー。 リトール それじゃあ進もう。 リルー ちょっと待って……。 リトール リルーは少し休んでいな。俺が先に見てくる。 リルー うん……わかった……。 リトール ……うむ。扉の先は特に問題……うわっ! リリア きゃ! 何? 風? リルー あ……リリア! それ以上後ろに下がっちゃダメ! SE:バタン! (扉が勢いよく閉まる音) リリア え……? リルー リリア! リリア きゃああ! リルー リリア! リトール! リリアが……リリアが下に落ちちゃった! リトール……? リトール! リトール く……扉が開かない……。リルー! どうなったんだ! リルー リトール! リリアが下に落ちちゃった! リトール よく見ろ! リリアはどこに落ちたんだ! リルー …………あ……リリア! リリア ……く……。 リルー リトール! リリアが壁の途中につかまってる! リトール く……何なんだこれは……。リルー! 待っていろ! 迂回してそっちに行く! リルー リトール……。僕が行くよ……。 リトール ……なんだと? リルー 僕がリリアを助けに行ってくる! リトール リルー……。 リルー リリア! 今から助けに行くから! リリア ……リルー……私は……大丈夫だから……。 リルー リリア……血が……血が出ているよ! 落ちたときにどこかぶつけたの!? リリア あ……これは……違うの……。 リルー いいから待ってて! 今……行くから! リリア ……リルー……。 リルー 次に進む場所が崩れない場所か……確認して……。 リリア リルー……こっちは……大丈夫だから……無理しないで……。 リルー 何でリリアが諦めるんだよ! リリア リルー……? リルー 諦めるなって……最後までがんばれって教えてくれたのはリリアじゃないかよっ! リリア いいの……私は……大丈夫だから……。 リルー いいから待ってて! 今行くから! リトール リルー……そうか……。 リルー もう……少し……。リリア! 手を伸ばして! リリア リルー……ありが……とう……。 リルー よし! 届いた! リリア! でもここじゃ……。 リトール リルー! そこはどんな感じなんだ!? リルー 足場が少ないよ! 下まで降りるのはかなり大変そう…。 リトール 怪我の具合はどうなんだ? リルー すごい血が出てる……。左腕からたくさん血が出ているよ! リリア これは……。 リトール 待っていろ! ……く! なんで扉が開かないんだ! リルー …………僕が上までおぶっていくよ……。 リリア リルー……? リルー ここじゃ怪我の治療もできない……。それに足場がすごく危ない……。それならさっきの扉のところまで行ったほうが……。 リリア でも……リルー……。 リルー リリア。ほら、僕の背中につかまって。 リリア リルー……。 リルー 僕は……リリアの味方だよ。だから……僕を信じてよ! リリア 味方……。 リルー そこから先はリリアが決めて。でも僕はリリアをおぶっていくって決めたから! リルー(ナレ) 僕は必死だった。リリアはここまでずっと情けない僕を支えてくれた。頼りになるリトールは今、扉の向こうでいない。だから僕ががんばるしかない。そう頭の中で繰り返していた。一歩一歩確実に進む。リトールが教えてくれたように……リリアが支えてくれたように……。かなり時間がかかったが僕は扉の前まで行くことができた。 リルー はぁ……はぁ……。 リリア リルー……本当に……本当にありがとう! リルー えへへ……だって……僕は……リリアの味方だもん。あ、そうだリトール! 扉は開きそう? リトール こっちからはダメだ……。 リルー ……それじゃあこっちからも扉引っ張るからリトールもそっちから押して! リトール わかった。 リルー いくよ……せーの! リトール ふん! リルー うわぁ! リリア 開いた……。 リルー よかった……。 リトール リルー。本当によくがんばったな。 リルー ちょっとリトール。あ、頭撫でるのやめてよっ! リトール 本当に……よくがんばったな。 リルー へへ……。そうだ、ここだとまた落ちちゃうかもしれないから扉の向こう側へ行こう。 リリア …………。 リトール …………。 リルー 二人とも……どうしたの……? リトール もう大丈夫だな。 リリア そうね。 リルー リリア……? リトール……? リトール リルー。お前はここまで歩いてこれた。そしてこの壁を登りきった。 リリア それにあんな危険な場所にも関わらず私を助けに来てくれた。本当に……リルー、逞しくなったね……。 リルー 二人とも……何を言っているの……? リトール く……。 リルー リトール!? ど、どうしたの……その足……血が……。 リトール これは事故のときの怪我だな。 リリア 私の左腕の怪我もそうだね……。これが出てきたってことは……。 リルー ね、ねぇ二人が何を言っているかわからないよ……? リトール ルー……。がんばるんだぞ。お前はもう俺たちがいなくても大丈夫だ。 リルー む、無理だよ……僕一人でなんて……。 リリア ルー……。思い出して。私を助けたときの勇気を。あなたなら大丈夫。大丈夫……だから……。 リルー 大丈夫じゃないよ! 僕には、二人がいないと……ダメだよっ! リトール こっちにくるな! こっちに……戻ってきちゃだめだ。 リルー なんで……。 リトール ……あとは一人で行くんだ。 リリア ……そうよ……。あとは……一人で行くのよ……。 リルー どうして……どうして……? リトール 俺たちはそっちに行けないからだ。思い出すんだ、ルー。 リルー 思い出す……? リリア ……ショッピングモール。 リルー ショッピングモール……? リリア 12月24日。クリスマスイヴのパーティの買出しにショッピングモールへ私たちは行った。 リルー 私たちって……。 リトール 俺とリア……。それからルー、お前だ。 リルー 僕たち……? リリア そう……私たちはパーティーの買出しに行った。でも……そこで事故が起こった……。何が起こったのかすらわからなかった……。 リルー え……? リリア ……ルー。あなただけが生き残ったのよ。 リルー それじゃあ二人は……? リトール 俺たちは死んだ。 リルー そんな……。 リトール だけど……俺は……いや俺たちはルーのことが……心配だったんだ。一人になったルーが絶望して歩くことをやめてしまわないか……心配だった。 リリア だけど……ルーはここまでがんばった。それにあんなに危険なところに私を助けに来てくれた。……もう私たちは……そんなルーの姿が見れただけで十分。きっとルーは大丈夫。 リルー そんな……こと……。 リトール いいかルー。これからお前は目覚める。そこに俺たちはいない。だが忘れるな。ここでお前が成し遂げたことを。 リルー いやだよ……。二人に……もう会えないなんて……。 リリア ……私だって……私だって……もうルーに会えなくなるなんて……いやだよ……。でもね……これはもう変えられないの……。 リトール ……あぁ……これで……さようならだ。 リルー ……いやだ……いやだよ! リトール ルー。お前は、最高の親友だ。お前なら大丈夫だ。歩き続けられる。 リリア うん……。ルーはかわいい弟みたいで本当に好きだった。そんな弟だと思っていたルーが私を助けて、おぶってあんな壁を登るんだもん。本当に……本当にうれしかった。 リルー いやだ! やめてよ! どこにも行かないでよ! リトール それじゃあな、ルー。 リリア バイバイ、ルー。 リルー リリア! リトール! 看護師 ひ!? え……? ルートヴィヒくん……? 先生! ルートヴィヒくんが目を醒ましました! リルー あれ……? ここは……? リルー(ナレ) 気がつくと、そこは病室だった。体のいたるところに包帯が巻かれ、加えてすごく痛かった。その後、白衣を着た先生が検査に来た。色々と精密検査をし、僕はやっと病室に帰ってこれた。そこには……母がいた。母は、泣きながら何度も確かめるように僕を抱きしめた。それから、落ち着いた母から事故の状況を聞いた。 母 ひどい事故だったのよ……。あんなに大きなショッピングモールが半壊してしまう爆発だったの……。 リルー 爆発……? 母 そう……。原因はクリスマスイベントで準備をしていた機械が故障して……花火が暴発して……その後、連鎖的にガス管に引火をしたみたい……。 リルー そんなことに……。 母 ルーたちがいた場所が最初の爆発があった場所の近くで……そのまま建物が倒壊して、下敷きになったの……。 リルー ……少しだけ……覚えてる……。 母 やっぱり……やめる……? 先生からPTSDの可能性があるからって言われて……。 リルー 聞かせて。 母 わ、わかったわ……。それからあなたたちは下敷きになってからも爆発と火事がひどくて救出困難だったの……。それから3日間……あなたたちは倒壊した建物の下に取り残されていた……。 リルー 3日間も……。 母 そんな状態だったからあなたたちの生存は絶望視されていたわ……。でも救助隊の人たちが瓦礫の撤去をしているときに……携帯電話の着信音が聞こえたらしいわ……。 リルー 携帯電話の着信音……? 母 それで……あなたたちを発見したのよ。 リルー ……僕たちを……ということは……。 母 衰弱をしていたけど……生きていたのはルーだけだった……。アメリアちゃんも……トオルくんも……。 リルー リア……トオル……。 母 あの子たちが…ルーをかばって助けてくれたみたい……。 リルー え……? 母 アメリアちゃんの左腕がルーの頭をかばって、トオルくんの足がルーの体を守ってくれたみたい……。 リルー 二人が……? 母 あの子達……ルーの体に覆いかぶさっていたから……そのおかげで……あの極寒の中、生きていられたらしいわ…。 リルー リアとトオルが……うぅ……。 母 ルー……? リルー ごめん母さん……。ちょっと一人に……。 母 ……えぇ。何かあったら呼んで頂戴。 リルー うん……。……うっく……ひっく……リア……トオル…。 リルー(ナレ) 僕は声を殺しながら泣いた。二人は……僕を護ってくれた……。それだけじゃなく……二人は情けない僕を最期の最期まで心配してくれた……。その時、ふと枕もとのテーブルに置かれた携帯電話に目が止まった。それを手に取り開いた。そこには……。 文章のみ(動画用) 差出人:アメリア 件名:Real Back to the Home 本文:忘れないで。 あなたが私を助けてくれたことを。 あなたは大丈夫。1人でも歩いていける。 私たちの分まで歩いて。    ルーのことが大好きなリリアより リルー ……うぅ……うわぁぁ…………うわぁぁあああ! リア……トオル……うわぁぁあああん! リルー(ナレ) ありがとう……。本当に……本当に……ありがとう……。 文章のみ(動画用) 宛先:アメリア・トオル 件名:Re:Real Back to the Home 本文: