お前ら モリ 性別 男 強情で融通の利かないガキ大将的な性格。言い出したら止まらないし怖いもの知らず。 クロ 性別 男 よくモリとケンカをする間柄。いつもモリの威張りっぷりが嫌いで仕方がない。 ミドリ 性別 男 客観的に物事を観察する冷静な性格。いつもモリとクロのケンカを止める役。    モリ いいや! 俺が行く! クロ だーかーら! なんでそうなるんだよ! 俺が行くって行ってるだろ! ミドリ いやいや……二人とも落ち着こうよ……。 モリ だいたいなんで俺がこんなところにこないといけないんだよ! クロ はぁ? 何で今更そんなこと言ってんの? じゃあそこでこわいよーって泣いていろよ! モリ あぁ? 誰が泣くって? ふざけんなよお前! ミドリ だから二人とも落ち着いて……。というかモリ。何か言ってることが支離滅裂だぞ? モリ どこがだよ! ミドリ だって……そもそも心霊スポットに行くのは学校で話していたことじゃん。それを今になって突然、行きたくなかったとか……。 モリ 俺は最初から行きたくないって言っただろ! ミドリ まぁ……たしかにモリはそう言ってたけどさ……。それじゃあ何でここに来て突然一人で行くとか言い出すのよ。 クロ 怖いから一人で行くふりして帰りたいんだろ。 モリ あぁ? ふざけんなよ! ミドリ どうどう……。というかモリは何で一人で行きたいのさ。 モリ 別に理由はねぇよ。 クロ じゃあ俺が先に一人で行って来るな。 モリ ふざけんな! クロ 何がどうふざけてるんですかー? モリ どうせクロが先に行って俺を驚かせようとするんだろ! クロ 何? 怖いの?www びびっちゃってるの? モリ あぁ? ミドリ だから二人とも落ち着こうよ……。何で全員で行くって考えが浮かばないかな……。 クロ ミドリは分かってないな……。それじゃつまねえだろ! ミドリ えぇー……そこー……? モリ けっ! クロ だから一人ずつ行って、ぐるっと一周して帰ってくれば肝試しになるじゃん。 ミドリ いやぁ……とは言ってもなぁ……。 モリ それなら俺が先に行っても問題ないな。 クロ おおありだ! 俺が先に行くに決まってるだろ! モリ あぁ? クロ あぁ? ミドリ いやいや……もうループですよ……。無限ループって怖いなぁ。 クロ 埒があかねえな。 モリ だから俺が先に一人で行けば解決だろ。 ミドリ あーもうやめてね……。もうループしないでね……。 モリ どうせお前らは俺が怖がるところを見たいだけだろ。 クロ べっつにー? ミドリ まぁ……俺は完全に巻き込まれてここにいるけどな……。 モリ それなら俺が一人で行って終わりでいいじゃねえかよ! クロ それじゃお前が怖がってるのわからないじゃねえかよ! ミドリ 暴露っちゃったよ……。 モリ けっ! どうせそんなことだと思ったわ……。 クロ やっべ……。 モリ そんなに見たいなら、これ使えばいいだろ。 ミドリ 携帯電話? モリ 動画撮っててやるよ。 クロ それだ! お前致命的なバカだと思ってたけど、ただのバカなんだなっ! モリ あぁ? ミドリ もうクロはいちいちケンカ売らなくていいからさ……。 モリ ちっ! まぁこれで道中、撮影してればいいだろ。 クロ いや……お前なら編集を……。 モリ してる暇ねえだろ! ミドリ まぁパソコン持ってきてるわけじゃないしね。でもそれでいいんじゃない? クロ まぁ仕方ない。それじゃあそれ持って行ってこいよ。 モリ 言われないでもそうするわ! ミドリ 行っちゃった……。というかクロは何でそんなに先に行きたかったの? クロ ん? 別に理由はないけど。 ミドリ ……じゃあ何でモリと無限ループしながらケンカしてたのよ……。 クロ あいつがむかつくから。 ミドリ まぁ分かってたけどさ……。 クロ あいつが右って行ったら俺は左だし、あいつが先に行くって言うなら俺が先に行くって言っただけ。 ミドリ そんなことしてるから心霊スポットに到着してもう三十分も経ってるよ……。 クロ いいじゃん。いい感じに夜も更けてきたし。そんなことよりミドリ。ここって何の心霊スポットなん? ミドリ 知らないのかよ……。ここは昔、病院だったんだよ。病院時代も何かと変な噂があったところでさ。たしか十年ぐらい前に何かやばい病気が院内感染しちゃって、かなりの死人出しちゃったらしいよ。それで病院は閉鎖。今に至るってわけ。 クロ それだけ? じゃあ何で心霊スポットなんだ? ミドリ んー? たしかここに来た人が数人行方不明になったって噂があるんだよね。 クロ おおー。なんかそれっぽい。 ミドリ それも何かグループで来たのに、そのうち一人だけいなくなったみたいな。 クロ ん? 何で一人だけ? ミドリ そんなの知らんよー。ただなんか突然一人が叫びだして、わーってどっかに行っちゃったらしいよ。 クロ なんだそれ。よくわからんな。 ミドリ 心霊スポットなんてそんなもんよー? クロ ……ふぅ。それにしても遅いな。タバコが切れた……。 ミドリ いや……タバコなんて吸ってないでしょ。そんなそれっぽくため息つかないでよ。 クロ いやそれでも感覚的にはタバコ一箱吸い終わった感じ。 ミドリ そこまでは時間経ってないけど……。でもさすがに遅いね……。 クロ モリのやつ……逃げやがったか……? ミドリ でもここってこの入り口ってこの門以外ないはずなんだけどな……。周りは高い塀に囲まれてるし。 クロ ってことは中にいるのか? ミドリ 携帯鳴らしてみなよ。 クロ そうだな。…………コールはしてるが……繋がらないな。 ミドリ うーん。どうする? 俺たちも行ってみる? クロ そうするか。 ミドリ まぁ病院って言っても診療所って感じだね。 クロ おぉう……なんか雰囲気満点だな……。 ミドリ 部屋もそんなにないからすぐに見つけられそうだね。 クロ ミドリ……お前怖くないの……? ミドリ んー? 別に? クロ ミドリって何気にすげーな……。 ミドリ そうかな……。にしても、モリいないね……。 クロ うおーーーいビビリーーー! 出てこいやーー! ミドリ 相変わらずクロのモリに対しての物言いがひどいなぁ…。 クロ あいつ……隠れてやがるぜ……。気配を感じる……。 ミドリ まぁ確かに人の気配はするね。気配っていうか物音? クロ ふ……俺たちを驚かせようとしてやがるな……。だがしかし! お前は重大なミスを犯している! 携帯の電源を切り忘れている! すなわち! ここで俺がコールすれば着信音が鳴るというわけだ! ミドリ まぁ動画撮るって言ってたしね。 クロ というわけで! コーーーール! SE:着信音 クロ ひぃ! ミドリ ……突っ込まんよー。自分で鳴らしておいて自分でびっくりしていることには突っ込まんよー。 クロ ったく驚かせやがって……。そこだな! ミドリ ……いないね。携帯だけ落ちてる。 クロ あいつ……あんなに携帯を大切にしていたのに……。 ミドリ ……そんな設定あったっけ……? クロ まったく……あいつもしかして本当に逃げたのか……? ミドリ んー。どうだろう。あ、動画は? 律儀なモリのことだから動画はしっかり撮ってるんじゃない? クロ おう。そうだな。…………あったあった。そんじゃ見てみるか。 モリ ……ったく……。くそ! 何なんだよ……あれは……。 クロ ぷぷー。あいつ開口一番にめっちゃびびってるぞー。 モリ ……そうだな。……俺はめちゃくちゃ怖い。だがな俺が怖がってるのは別にここがじゃねえぞ。 クロ 必死に言い訳してる。ぷふーーー。 ミドリ 目的を達成できてクロは楽しそうだねえ……。 モリ 俺が怖いのはな……お前ら三人だよ……。何なんだよ! 突然、心霊スポットに行きたいとか言い出しやがるし…。 クロ 怖がれ怖がれ〜。 モリ わけがわからん……。何でお前ら気がついてないんだよ……。もう勘弁してくれ……。だから俺は一人になりたかったんだよ……。お前ら三人の俺を見る目が怖いんだよ……。くそ……くそ……。やめろよ……。 ミドリ 動画終わったね。 クロ これだけ……? というか俺たちがモリを見る目ってなんだ? ミドリ …………わかんない。 クロ 別に俺たちそこまであいつを追い込んではないよな? ミドリ まぁ……いつもどおり仲良くケンカしてたね。 クロ あいつ怖すぎておかしくなっちまったのか? ミドリ うーん……。 クロ しかし……あいつ……本当にどこに行ったんだ……? ミドリ(ナレ) その夜。結局モリを見つけることはできなかった。時間もかなり遅くなり、結論としてはモリは帰ったんだろうということで、その日は切り上げて帰ることにした。その翌日。モリは家に帰っていなかったと学校で知った。夜に一緒にいた俺たちは昨晩のことを先生に話した。その後、モリを捜索したが……モリは結局見つからなかった……。モリの携帯は捜索の際に警察に提出したが、特に手がかりはつかめず親のもとに返された。俺はモリが何かを伝えたかったのではないかと思い、その携帯の残っていた動画を改めて見直した。 そして俺は気がついた。 あぁ……そういうことか……。