となりダンカ タカシ 性別 男 怖いもの好きで怖い話が大好き。しかし心霊体験はなし。心霊スポットを楽しそうに先陣を切るタイプ。 ミホ 性別 女 怖がりで怖い話が苦手。タカシに無理やり連れまわされる。人に流されやすい性格。 タダノリ 性別 男 寺の息子で少しボケーっとしている。寺跡継ぎなため、不思議な体験などは日常茶飯事であまり動じない。    タカシ 夏恒例! ドキッお化けだらけの肝試し大会〜! タダノリ おー。 ミホ うぇ〜ん……やだよぉ……。 タカシ しかし、まさかタダノリのお寺を貸してもらえるとは思わなかったなぁ。 タダノリ まぁ……寺の一部屋と墓場だけなら別に問題ないからな。ただ、明日の準備とかしてあるから他の部屋は入るなよ。 タカシ 了解〜〜。ほらーミホ〜元気だせよっ! ミホ むりむりむり! むりだよぉ……。なんで……? 私怖がりなの知っているよねぇ? タカシ 知ってるよ? ミホ じゃあなんでぇええ!? タカシ ミホみたいに怖がりがいると……楽しい! ミホ タカシのいじめっ子ーーー!? タカシ そんなに泣くなって〜。それにお前準備万端じゃないか。浴衣まで着て。 ミホ これは花火の準備万端だったんだよぉおお! 花火大会やるっていうから浴衣着てきたのぉおお! タカシ あははっ! タダノリ あ、なるべく声小さくな。隣に檀家の方がいるから。 タカシ おおう悪い悪い。それじゃあさっそく怖い話から始めようか〜。 ミホ えぇーーーー! 肝試しだけじゃないのぉおお! タカシ まずは雰囲気作りからだろう〜。 ミホ いやだよぉ……いやだよぉ……。 タダノリ わかったからお前らもう少し静かにな。 タカシ 悪い悪い。それじゃあ……ここからは声のトーンを落として雰囲気を最高にあげようか……。 ミホ いやぁぁぁ………………。 タカシ まず俺から……これは……とある家族の心霊体験……。 タダノリ どこかで聞いたアニメのタイトルみたいだな。 ミホ うぅ……。 タカシ 仲の良い夫婦に息子が一人。平和な日々が続いていたがある日……ほんの些細なことで夫婦が喧嘩をしてしまった。 タダノリ 喧嘩しない夫婦もまず、いないからな。 ミホ いいよぉ……私、結婚しても絶対に喧嘩しないからぁ……この話やめようよぉ……。 タカシ 普段喧嘩をしない夫婦だったから途中から歯止めが利かなくなってしまい……旦那はカッとなり奥さんを殺してしまった……。 タダノリ 随分工程を省いて殺害にいたったな。 ミホ 何でぇ……。仲良かったんだからごめんなさいで終わろうよぉ……。 タカシ 時間も夜中。息子も完全に寝入っていた。殺した瞬間も大きな物音は立てていない。あとは死体さえ隠せば完全犯罪だ。そう思った旦那は、死体を運び誰も来ない山に埋めた。 ミホ ……終わり? 終わりだよねぇ……? タカシ そして次の日……旦那は少し不安に思いながらも息子を起こした……。 ミホ ふぇぇん……。終わってないぃぃ……。 タカシ 息子はまだ小さい。母親っ子で母親がいないとすぐに泣き出してしまう。だから母親がいないことで泣き出したらどうするか……。そんなことを考えながら、息子を起こし、朝食を作り、保育園へと送る。しかし息子は泣き出すどころかいつもどおりだった。きっと母親がいないことに気がついていない……。それなら好都合と、旦那は、息子に対していつもどおりに接していた。そして、1日が過ぎ、1週間がすぎ……ついに1ヶ月が過ぎた。しかし、息子は泣くどころか母親がいなくても普通に生活をしていた。さすがに気になり父親は息子に聞きいた……。「パパに何か聞きたいことある?」そう聞くと子供は首を傾げながら少し考え出した。そしてこう聞いてきた……。 ミホ あー……あー……き、きこえないぃぃ…………。 タカシ 「あのねパパ。なんでいつもママをおんぶしているの?」 ミホ きこえないいいいいいいいいいい! タカシ そう……息子はずっと父親に背負われていた死んだはずの母親を見ていたのだった……。 ミホ いやぁあああああああああああああああ! タダノリ その息子も随分変わっているな。1ヶ月近く母親が父親におんぶされていることに突っ込みもしないとは。 ミホ そ。そういう問題じゃぁあないよおおお……。うわぁーん……。 タカシ あっはは! 結構有名な話だけどなぁ〜。 ミホ うぅ……もういやだぁ……。 タカシ それじゃあ次は……機転を狙ってミホ! ミホ えぇぇえ! わ、私何も怖い話なんて知らないよ……? タカシ ほらなんでもいいから思い出してみ? ミホ うーん…………怖い話……。あ、怖い話じゃないけど……なんか変わった話なら……。 タカシ じゃあそれでもいいや。ごー。 ミホ ええっと……。これはスキーに行った4人の大学生の話。4人はいつもと違ったコースに入ってしまい、遭難してしまいした……。しかも吹雪になってしまい、最悪の状況になってしまいました。 タカシ これは驚きだ……ミホのくせに思いのほか本格的な話だ。 ミホ ええっと……それで、このままだと絶対に死んでしまう、と思った矢先、山小屋を発見しました。4人は急いで山小屋に駆け込み暖をとり始めました。しかし、吹雪はひどくなる一方で、時間的に朝が来ているはずなのに外は薄暗いままでした。遭難で疲れきっている上に夜通し遭難の不安で眠れなかった4人の体力が限界でウトウトしだしていました。でも、こんなところで寝たら死んでしまう、という不安が全員の頭をよぎっていました。 タダノリ 実はそれは間違っているんだ。寒いところで眠るから死ぬんじゃなくて、眠っている間に体温が下がって、死んでしまうんだ。だから長時間寝なければいい。逆に少しなら寝たほうがいいんだ。 ミホ え? そうなの? タダノリ あぁ。雪山での遭難の死亡原因上位が疲労による凍死なんだ。疲労して体温が上がらなくなって凍死してしまうんだ。 ミホ へぇ〜。そうなんだぁ。 タカシ おい。話の続きはどうした。 ミホ あ、そうだった。えっと……それで凍死してしまわないように4人が部屋の四隅に座って五分毎ごとに東回りに歩いて起こして回る。起こされた人は起こした人と交代して次の角に向かう、というものでした。そして……その翌日、4人は無事に救出されました。……って話。あれ? なんかぜんぜん怖くない話……ってタカシなんで険しい顔してるの? タカシ ……驚いた……ミホが……そんな怖い話を持ってくるなんて……。 ミホ え? え? タダノリ 4人が部屋の四隅で順番に起こす。これできないからな。 ミホ え? なんで? タダノリ まず1人目が移動して次の人を起こす。そして次の人が起こして、また次の人が起こす。それで4人目が次に起こす先は、一番最初にいた人の場所。 ミホ ええっと……うん。そうなるよね……。 タダノリ でも最初の人は次の人を起こすために移動しているからそこには誰もいない。つまり……。 ミホ ええっと……1人目が移動して……次が移動して…………あれ……そうすると……。え……? タカシ つまり……この起こし方だと……。 ミホ ご、5人いないと……できないぃぃいいいい! だ、だれ!? 誰があそこにいたのぉおおお!? タカシ びっくりしたぜ……まさかミホがこんな話を持ってくるとはな……。 ミホ ひぃいい! 話を聞いたとき意味がわからない話だと思っていたのにぃぃいいい! タダノリ まさに意味が分かると怖い話だな。 タカシ よし! それじゃあ次! タダノリ! ミホ もうやだ……もうやだ……。 タダノリ 俺か……そうだな……。それじゃあ、あれはなんだ? ミホ え? 隣の部屋のふすま……? SE:ドンドンドン! ミホ いやあああああああああ! タカシ うわぁああああああああ! ミホ 何!? 何の音!? タダノリ だから、隣は檀家の方がいるんだ。 タカシ な、なんだびっくりした……。 ミホ うぅ……心臓吐き出すところだった……。 タダノリ そこは吐き出すんじゃなくて飛び出すものじゃないのか? タカシ というかミホが叫びまくるから隣の人が怒ってるじゃないか。あ、隣の方すいませんね〜。 ミホ 叫ばせたのはタカシだよぉ……。 タカシ ということで〜これからタダノリのお寺の墓地をぐるっと一周する肝試しツアーに出発だぁ〜。 ミホ い! ……いやだぁぁあ…………。 タダノリ 墓地は荒らすなよ。 タカシ ということで〜明かりはこの提灯一つだ〜。 ミホ うぅ……くらいよぉ……。 タダノリ ふざけて提灯ひっくり返してボヤとかやめてくれよ。 タカシ わーってるって! それじゃあサクサクいくぞー。 ミホ タカシまってぇええ。 タダノリ ちなみにこの墓地って何気に広いからな。 タカシ いいねぇ……鈴虫の鳴き声しか聞こえない……。 ミホ うぅ……。 タカシ そうだタダノリ。この墓地にまつわる怖い話とかないのか? タダノリ ……お前は墓地は怖い話の宝庫とか思っているのか……? タカシ お恥ずかしながら、その通りでありますっ! タダノリ ……なんて失礼な奴だ……。まぁたしかになくはないけどな。 ミホ いいよ〜。言わなくていいよ〜〜。 タダノリ あれはいつだったかな……たしか小雨が降る露時だった。 ミホ ……タダノリもイジメっ子……? タダノリ お墓参りに来ていたご家族の方々がいたんだ。その時は今日みたいに親父……えっと住職がいなかった日だった。 タカシ え? 親父さん今日いないのか? タダノリ 言ってなかったか? 明日の準備で今日は外に出ている。 タカシ まったく聞いていない。 タダノリ そうか。それでとりあえず今日みたいにいない日だったんだ。 ミホ そのまま話続けてる……。 タダノリ 俺はそのご家族の方に挨拶をしたから覚えているんだが、その時たしかに4人いたんだ。でもそのご家族の方々が帰られる時……3人になっていた。 タカシ ……1人減っていた……? タダノリ しかも1人減っていることにご家族の方々が気がついていなかったんだ……。 ミホ ひぃぃぃい…………もうやめてぇ…………。 タカシ 雰囲気出てきたじゃないか〜。 タダノリ あ。 ミホ ひっ! タダノリ……と、突然へんな声上げないでよぉ……。 タカシ ミホ……。男としてそうやって引っ付かれるのはうれしいが……他の男にやったら確実に勘違いするからやるなよ。 ミホ ……なにがぁ? タカシ それだよそれ。涙目で上目遣い。もうね……正常な男だったら爆発して火達磨だ。 ミホ ……タカシ頭大丈夫……? タカシ タカシの頭は大丈夫です……。ってそんなことよりタダノリどうした……あれ? ミホ どうしたの……? タカシ タダノリ……どこに行ったんだ……? ミホ や……やめてぇ……さっきの話の続き……? タカシ いや……ほら……後ろにいたタダノリが……本当にいないんだ……。 ミホ 振り向かない。絶対に。 タカシ いや、マジだってマジ。タダノリ! どこに行ったー! ミホ タカシは何を言っているの? タダノリいるじゃない〜。 タカシ 目を瞑って泣きそうな表情であたかも本当にいるように語るなよ。 ミホ 俺はここにいるぜ〜。ふふん。(タダノリの真似) タカシ いやぜんぜん似てないぞ。 ミホ え? 私何もやってないよ? タカシ いいから後ろを見ろ……っての! ミホ い……いやだぁぁぁああ…………。ううううぅ……。いやぁああああ! 誰もいないぃぃいい! タカシ だから言っただろ。しかし……本当にどこに行ったんだ……? ミホ タダノリぃぃ…………か、隠れているんだよね……? 私たちを驚かそうとしているんだよね……? タカシ いや……あいつはそんな悪ふざけはしない奴だ……。 ミホ どどどどどどどどどこに行ったのぉぉおお……。 タカシ ちょっと探そう。ミホはあっちな。俺はこっちを探……。 ミホ いや! タカシ ……わかったから……一緒に探しに行くぞ……。 タカシ ……墓地のどこにもいない……。さっきの部屋に戻ってきているかと思ったが……ここにもいない……。 ミホ …………ねぇ……これってさっき……タダノリが話していた……。 タカシ …………そんなはず……ないだろう……。 ミホ そ、そうだ! タダノリのお父様なら何か……。 タカシ タダノリが言っていただろ……? 親父さんは外に出ていて今はいないって……。 ミホ うぅ……。タダノリぃぃい! どこ行ったのぉお! SE:どんどんどん! タカシ バカ。大声出すなって。隣に檀家の人がいるって言っていただろ。……あ。そうだ、隣の人ならタダノリがどこ行ったか知ってるかも。 ミホ あ、そっか! タカシ よし。あの〜すいません。 ミホ …………反応がない……。 タカシ 開けてみるか……。すいませーん……。 ミホ ……お線香の匂い……? タカシ …………あれ? 誰もいないな……。……なんだこれ…。 ミホ え? どうしたの……? タカシ ……葬式……? ミホ ……え? タカシ 仏壇に鯨幕……それに……棺……。 ミホ ……え……? タカシ そ、それに誰もいないぞ……? タダノリ いるだろ。 ミホ ひうっ! タカシ うわっ! お、驚いた……。突然背後に現れるなよ……。 タダノリ お前らこそどこに行っていたんだよ。 タカシ それはこっちの台詞だっていうの……。 タダノリ 俺は墓地に活けてあった花が倒れていたから直していただけだ。 タカシ そうだったのか……。 タダノリ というかお前ら、別の部屋には入るなって言っただろ。明日の準備で色々大変なんだ。 タカシ 明日の準備って葬式の準備だったのか……。 ミホ ……ね、ねぇ……? タダノリ……今、誰かいるっていったよね……? タダノリ あぁ。 ミホ で、でも誰も……いないよ……? タダノリ だからいるだろ。ご遺体が。 ミホ ひぅっ! タダノリ そこはご遺体を明日の葬式まで安置する部屋だからな。基本的に明日までご遺体以外はそこに入らない。 タカシ ……ちょっと待て……。じゃあ……なんで……この部屋から音が……。 タダノリ だから何度も言っているだろ。この部屋にはご遺体がいるんだ。 ミホ ……も、もしかして……。 タダノリ あぁ。その音は……。 そこのご遺体だろうな。 ミホ い、いやああっ…………あふぅ…………。 タダノリ この話は事実を元に作られている。葬式前などにご遺体を安置している部屋から物音がするというのは、お寺ではよくある話。葬式を行うまでご遺体は現世に留まっている。だから最後の最後に自分という存在をアピールしたかったのだろう。